ソファにはコート、枕元にね本

今更ながら吉本ばななの「キッチン」を買った。大事に大事に読もうと思いながらまだ枕元に置かれたまま。

いかにも、というものに改めて魅力を感じるようになってきた。いかにも好きそうな音楽、喫茶、間隔、文章、人柄、景色、気温、服装、会話。

今更ながらカーキのキルティングコートを買った。同じく今更ながら触手の太いマフラーも買った。

マフラーが欲しくて街にでたら、とても感じの良い店員さんで、ビジネス方言を使うところが私に似ていて、その人にそのマフラーはこのコートに合いますよと勧められて、言われるがままに着せられ巻かれ、本当にマフラーとコートが合っていた。ついでに私にもきっと似合っていた。

大人になるにつれて財布の紐は緩くなり、気持ちのいい接客やいいなと思う表現にお金を使いたいと思うようになってきた。消費者行動にとても素直。

そして一周流行りきったものが好き。みんなが好きだったものなんて私も好き。人が好きなものをそれが理由で好きじゃなくなる人のことよく分からない。

今更ながらな人に会った。

今更ながらあの日の写真を送った。

今更ながらその気持ちを思い出した。

でも今更なんてことは本当はなくて、今更だと思うような今があるばかりだと思うことにした。

今の自分がいつだって一番好きだと言っている自分が好き。